『英文解釈教室(新装版/改訂版)』(以下、「解釈教室」と略)は、その名声に惹かれて多くの人が挑むものの、ほとんどの人が完読できず、諦めてしまっているようです。古本屋で、最初のほうだけに書き込みのある「解釈教室」に遭遇することが多いのですが、その度に「この人も挫折してしまったか……」と残念な気持ちになります。私自身、高校2年生の2学期に挑戦したものの、いきなり第1章で挫折し「自分には、この名著を攻略することはやっぱりできないのか」という大きな絶望感を味わいました。
その後、高3の1学期に出会った先生の授業が素晴らしく、そこで大きく英語力が伸び、たまたま高3の夏休みに完読できましたが、その先生で出会っていなければ自分も未読のままだったはずです。この名著を攻略することへの憧れと、また、この書を攻略することの難しさは把握しているつもりです。この書の難解さをやわらげ、少しでも多くの方にその憧れを現実のものにしてもらいたく、この講座を用意しました。
日本には素晴らしい「参考書文化」があります。自分が執筆をする際には、当然ながら「これまでに不足しているものを作りたい」という気持ちで臨んでいるのですが、同時に「自著を読むことによって、読者諸氏が、既存の名著を読みこなせるようになってほしい」という大きな希望も持っています。そしてその「既存の名著」の中でも、特に強く意識しているのが、この「解釈教室」なのです。
『一生モノの英文法COMPLETE』(以下、「COMPLETE」と略)と『よくわかる英語の基本』(以下、「英語の基本」)を読めば、「解釈教室」攻略のための準備が整います。仮に、「解釈教室」だけを用意し、すぐに入っていければ最も無駄がないのですが、「解釈教室」は、挑む前の段階で、相当の文法力が必要となります。ヤワな力のまま挑むと、ほぼ確実に跳ね返されます。「解釈教室」の挫折率は9割以上だという話を聞いたことがありますが、おそらく事実でしょうし、とりあえず完読した方も、完全には理解できていない箇所が少なからずあるように思います。その点からもやはり、挑戦者に何らかのサポートがあったほうが望ましいと考えます。
その「相当の文法力」を付けるための手段として、「COMPLETE」「英語の基本」を利用して下さり、完全な理解への補助として、このHPの解説を利用して頂ければ光栄です。
「解釈教室」に入る前に、数千円の出費と、読む期間が必要になりますが、最初にかけた負担は、必ず大きな報いになるようにしますのでご容赦下さい。
「COMPLETE」には、おそらく日本の出版界で初の試みである「ナビゲーションCD」があり、音声のガイドに従って最後まで読み進めることができます。「COMPLETE」が読み切れたのであれば、「英語の基本」はそこに肉付けをしていくように容易に読むことができます。
「COMPLETE」は、中学2年生以上、特に中学3年生以上であれば確実に読めるように書いたつもりですが、中学2年生くらいまでの方、あるいは大きな不安を抱えていらっしゃる方は、「COMPLETE」より更に易しく、ABCから学べる『基礎がため一生モノの英文法BASIC』を出発点にしてください。こちらは「COMPLETE」以上に豊かなナビゲーションを付けてあります。
拙作ではなく、手持ちの厚い文法書を使って準備ができないか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ほぼ全ての厚い文法書は、辞書的なものです。 よほどの人でない限り、このような辞書的な文法書を独力で読み切ることは不可能です。事実、多くの人が文法書を持っていると思いますが、通読した、という方はほとんどいないはずです。よってこれらを準備に用いるのは苦しいのです(この点および、辞書的な文法書の効果的な利用法については、『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』の2章に詳述しておきました。お持ちの方はご参照ください)。
上記2冊を読み終えたら、随時、これを参照しながら「解釈教室」を読み進めていきます。「解釈教室」を読み切り、復習をすれば、あとは自力でどんどん勉強を進めることができるようになります。「教師いらず」の状態になるのです。今まではあまり面白くないと思っていた英語学習が楽しいものになります。「勉強を楽しむ」などということは、現在、苦しんでいる人からすると別世界のことのようですが、本当にそのように変化します。そして「辞書を用いながら、英字新聞や英文雑誌を読んで楽しむ」ということも現実になります。
このようなことは、初歩レベルの方からすれば、夢物語のようなことかもしれませんが、多くの人が、この「解釈教室」を完読・復習することによって、そのような夢を現実にしてきました。みなさんも、ぜひ、この大きな感動を味わってください。
伊藤和夫先生(1927~1997)は、駿台予備校の講師でしたので、「解釈教室」は、大学受験生を最も強く意識しながら執筆されたものだということは間違いないと思います。
とはいえ、そもそも英文を読むのに、「学生としての読み方」と、「社会人としての読み方」に違いなどあるはずがなく、ゆえに「解釈教室」は、英文を読みこなせるようになりたい全ての人のためのものだといえます。
中学生、高校生・浪人生のみならず、英字新聞・英文雑誌、英語の論文、英文契約書、英語小説などを読めるようになりたいと思っている大学生・社会人の方、TOEICや英検の読解問題で高得点を狙っている方など、「解釈教室」は、全英語学習者に有用なのです。
特に、大学等で難解な原書を確実に読みこなしたいという志を持っている方は、ぜひともこの書を仕上げてほしいと願っています。
ただ、“ビジネス英語”の学習やTOEIC受験対策を重点的に行いたい方は、併設してある「ビジネス英語入門講座 ~TOEIC受験の準備のためにも~」を先に終えてください。これについてはIntroduction 4で述べます。
すでに「解釈教室」を手にしている人はお分かりになりますが、この本は全部で15のChapter(日本語で言えば「章」)がありますが、各Chapterとも、短い「例文」と、長めの「例題」から成ります。
私のかぞえ間違いがなければ、例文の総計は452であり、例題は95です。各Chapter平均で、それぞれ約30文と約6文です。
私が受験生の頃の合格体験記では、「1度目は例文のみを読み、次に例題を読み、3度目はまとめて通読する」というのが一般的な攻略法でした。実際、私もその順で完読しました。このガイドページでも同じように、まずは例文のみに絞って読み進め、その後に例題に入ることにします。
ただ、「例文」を終えた段階で、いったんは「解釈教室」から離れるというのも大きな一つの選択肢です。上掲の『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』の最終章で、「解釈教室」を終えた後に取り組んでほしい3冊の本を挙げましたが、少しでも早く他の本の世界にも触れたい場合は、「例文」を終えた後に、これらの3冊等、他の書籍に進んでください。そのうえでいつか、「解釈教室」の「例題」に戻ってきてもらえればと思います。
上で言及した「ビジネス英語入門講座 ~TOEIC受験の準備のためにも~」との関連を述べておきます。
大学生の方、社会人の方は、できればこの解説講座ではなく、もう1つの「ビジネス英語入門講座 ~TOEIC受験の準備のためにも~」を先に終えて頂ければ思います。こちらのほうが大学生、社会人の方、TOEIC受験生が求めている英語力がダイレクトに付きます。また、各段に取り組みやすく、取り組むのに必要な費用も安く済みます。
大学付属の高校に通っており、「受験勉強」を意識しないで学べる立場にいる高校生の方も、ぜひそちらを先にトライしてみてください。大半の人が大学に入って学ぶ必要が生じる種類の英語学習に、高校のうちから取り組めるということは、やはりいろいろな利点が生じるはずです。